2007年8月7日火曜日

Fw 基本料がいきなり半額!携帯3キャリアの新たな料金施策を検証【前編】

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基本料がいきなり半額!携帯3キャリアの新たな料金施策を検証【前編】
ケータイの深層

 番号ポータビリティ(MNP)の開始以降、携帯電話各社が投入する端末は飛躍的に増加し、新しいサービスも次々と生まれてきた。だが、あまり手がつけられていない施策が唯一存在した。それが「料金」だ。

 携帯電話の基本料・通話料に関しては、確かに3番手であるソフトバンクが、スーパーボーナス、ホワイトプランといった施策を次々と打ち出している。だが、NTTドコモとKDDIの2社は、これまで料金に関して積極的に動く姿勢を見せなかった。しかし唯一料金施策を行ったソフトバンクが、5、6月と2カ月連続で純増シェアトップを記録するなど好調であることから、他の2社も料金施策に本腰を入れ始めたようだ。

 6月から7月にかけて各社から次々と打ち出された料金施策だが、これによってどんな時にお得になるのか、契約形態はどうなるのか、ソフトバンクのホワイトプランと比べるとどうなのかなど、何かと気になっている人も多いはず。そこで、今回は、ここ最近発表された各キャリアの料金施策をじっくり検証していくことにしよう。

結局、どんな料金施策が行われたのか? およそ1カ月の間に、携帯電話3社が次々と料金施策を打ち出してきたことから、混乱して内容をよく把握していないという人も少なくないと思う。そこで、検証の前に、改めて各社の料金施策を整理しておこう。

 最初に施策を打ち出したのは、最近、純増シェアで伸び悩んでいるNTTドコモだ。同社が6月26日に打ち出したのは「ファミ割MAX」「ひとりでも割」の2つ。前者はファミリー割引の契約者向けの施策で、全員の継続利用期間による割引率を、ファミリー割引を契約した同一グループの中で最も契約期間の長い人(ただし2年以上に限る)に合わせるというもの。後者は、「ファミリー割引」+「(新)いちねん割引」と同等以上の割引を、1人でも受けられるというもので、auの「MY割」への対抗策と言えるものだ。なお、いずれも2年間の継続契約が必須となっている。

 続いて、KDDIが7月19日に「誰でも割」を9月1日から開始すると発表した。これはMY割の後継と言えるサービスで、2年間の継続契約を条件に、1人で「年割」+「家族割」の最大の割引率を受けることができるというもの。従来のMY割では、WINの新規契約と同時に適用すると「家族割」+「年割(1年目)」と同等の割引を受けることができたが、誰でも割では「家族割」+「年割(10年超)」の割引をいきなり受けることができ、プランによっては基本料が実質半額になってしまうというわけだ。なお、現在MY割を契約しているユーザーは、9月から誰でも割が自動的に適用されるという。

●MY割と誰でも割の割引率の比較
継続利
用年数 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目 10年超
My割の
割引率 36.5% 38% 39.5% 41% 42.5% 44% 45.5% 47% 48% 49% 50%
誰でも
割の
割引率 一律50%

 さらにauの発表直後の7月27日、NTTドコモはまだ開始されていない「ファミ割MAX」「ひとりでも割」改変するという、対抗策を打ち出してきたのである。前者は「ファミ割MAX50」へと名称変更して、割引率を全員一律50%へと変更。全員が契約初年度の場合も割引を受けることができるようになった。また後者も「ひとりでも割50」となり、割引率が一律「ファミリー割引」+「(新)いちねん割引(10年超)」(つまり50%)へと変更されたのだ。ちなみに両サービスとも開始は9月1日からで、2年間の継続契約が必要な点は変わっていない。

●NTTドコモの割引施策変更前・変更後の割引率の比較
継続利用
年数 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目 10年超
ファミ割MAX
の割引率 ― 37% 39% 41% 43% 45% 46% 47% 48% 49% 50%
ひとりでも割
の割引率 37% 38% 40% 41% 43% 45% 46% 47% 48% 49% 50%
ファミ割MAX50
・ひとりでも割50
の割引率 一律50%

 一方、ソフトバンクはNTTドコモ・au両者の料金施策変更から24時間以内に対抗策を打ち出す方針であることから、ブルー・オレンジ両プランに対して、それぞれ対抗の割引サービスを打ち出している。ブループランには「ファミ割MAX50」「ひとりでも割50」の対抗策として「家族割引MAX50」「自分割引50」を、オレンジプランには「誰でも割」の対抗策として「新・自分割引」をそれぞれ投入している。なお開始日も他の2社と同様、9月1日となっている。


「初年度から大幅割引」はどんなメリットがあるのか? では、一体これらの料金施策を導入すると、何が変わって何が変わらないのだろうか?各社の施策に共通したメリットを確認してみると、

 メリット1:基本料が「家族割引サービス」+「継続割引サービスの最大年数分」割り引かれる

 メリット2:無料通話・通信分はそのまま

 という2点が挙げられる。家族割引サービスと、継続割引サービスの両方の割引率を合わせると、基本料が50%割り引きになるケースが多いことから、「基本料が半額になる割引サービス」と思われがちだ。だが、au(CDMA 1X)の「サポートプラン」は約65%、ソフトバンク(オレンジプラン(X))の「ビジネス」は47%といったように、必ずしも50%割引になるわけではないことには注意したい。

 また、ソフトバンクのホワイトプランを契約しているのでなければ、多くの人が家族割引サービスや継続割引サービスの両方を契約していることだろう。そのため、現在支払っている基本料が半額になるとは限らないという点にも注意したい。

●キャリアや分類による割引率の違い
キャリア
(割引サービス) 分類 割引サービス 割引率
NTTドコモ 共通 ファミ割MAX50・
ひとりでも割50 50%
au CDMA 1X WIN 誰でも割 50%(デイタイムプラン
WINのみ55%)
CDMA 1X 約49%(デイタイムプラン等)
~約65%(サポートプラン)
ソフトバンク ブループラン 家族割引MAX50・
自分割引50 50%
オレンジプラン(W) 新・自分割引 50%
オレンジプラン(X) 52%(ビジネス、
スタンダードのみ47%)

 とはいえ、主要な料金プランが最初から50%割引で利用できるメリットは大きい。一例として、NTTドコモのタイプSSを新規契約した場合で比較してみよう。このプランの月額基本料は3780円だが、(新)いちねん割引を適用すると初年度は10%割り引かれるので3402円、さらにファミリー割引を追加すると2457円となる。だが、「ファミ割MAX50」または「ひとりでも割50」を適用すると、一気に1890円まで基本料を下げることができるのである。しかも無料通話分(タイプSSの場合1050円)はそのまま適用されるので、これを差し引くと840円となり、通話量によってはホワイトプランよりお得と解釈することだってできるのだ。

●契約初年度の基本料と割引サービス適用時の比較(NTTドコモの場合)
料金プラン 基本料
(無料通話分) (新)いちねん
割引適用時 (新)いちねん割引
+ファミリー割引
適用時 ファミ割MAX50
・ひとりでも割50
適用時
タイプSS 3,780円
(1,050円) 3,402円 2,457円 1,890円
タイプS 4,830円
(2,100円) 4,347円 3,139円 2,415円
タイプM 6,930円
(4,200円) 6,237円 4,504円 3,465円
タイプL 10,080円
(6,300円) 9,072円 6,552円 5,040円
タイプLL 15,330円
(11,550円) 13,797円 9,964円 7,665円

 主要料金プランの基本料が50%割引になるというのは、単に契約するプランの料金が安くなるというだけではない。これまでと同程度の料金で、より上のプランが利用できるようになるというのも、大きなメリットといえるだろう。例えば、auのWIN端末向けプランである「プランS」を新規契約し、家族割と年割を適用すると3133円となる。この料金は、一つ上のプランである「プランM」と誰でも割を適用した場合の料金(3465円)と332円しか違わず、しかもプランMはプランSと比べ通話料が2.1円/30秒分安く、無料通話分が2,152円も多い。今まで利用していたプランに少し料金をプラスするだけで、より多くのメリットが享受できるプランが利用できるというわけだ。

●新割引サービスを適用した上位プランとの料金差(au・WINの場合)
料金プラン 基本料
(無料通話分) (1)年割+
家族割適用時 (2)誰でも割
適用時 (1)と上位プランの
(2)との差額
プランSS 3,780円
(1,050円) 2,400円 1,890円 67円
プランS 4,935円
(2,100円) 3,133円 2,467円 332円
プランM 6,930円
(4,252円) 4,400円 3,465円 587円
プランL 9,500円
(6,615円) 6,333円 4,987円 1542円
プランLL 15,750円
(12,600円) 10,001円 7,875円 ─


「2年契約必須」に気をつけよう! 非常に大きなメリットを得ることができる各社の新しい料金施策だが、共通したデメリットがあることも忘れてはならない。これらのサービスを利用するには2年間の継続契約が必須であり、もし契約期間中に解約してしまうと、9975円もの契約解除料が発生してしまうのだ。

 9975円という金額はauのMY割の契約解除料と同じで、最も高額な部類に入る。基本料が安く契約者も多いNTTドコモの「タイプSS」やauの「プランSS」に、新割引サービスを適用した場合の基本料はいずれも1890円であり、契約解除料はなんとその約5ヶ月分に相当することとなる。基本料の安いプランを契約している人であればあるほど、慎重に判断する必要があるだろう。

 ただ、ソフトバンクの場合は契約解除料を軽減する方法がある。解約前に一度ホワイトプランに移行し、「6ヶ月契約」を行った後に解約すれば、支払う料金はホワイトプランの基本料(980円)+6ヶ月契約の解除料(5250円)=6230円で済むし、そのまま6ヶ月経過した後に解約すれば、5880円+解約した日までの日割り料金にまで抑えることができる。ちなみに、新旧スーパーボーナス適用中は6ヶ月契約が不要なので、解除料は実質「980円+未払いの端末料金」ということになる。

●契約解除金で利用可能な月数の比較(NTTドコモの場合)
料金プラン 新割引サービス
適用時の基本料 契約解除料(9975円)で
利用可能な月数
タイプSS 1890円 5.28
タイプS 2415円 4.13
タイプM 3465円 2.88
タイプL 5040円 1.98
タイプLL 7665円 1.3
「家族への対応」があるか否かが大きな違い NTTドコモとauの料金施策を見ると、両者で大きく異なる部分が存在する。それは家族への対応だ。

 NTTドコモの場合、当初2つの施策を同時に打ち出したことから、ひとりでも割50だけでなくファミ割MAX50も用意されている。後者を利用すれば、ファミリー割引に入っている場合は割引サービスの契約者が1人で済むため、手続きが非常に楽である。また、契約途中で「家族全員で他のキャリアに移行したい」という場合も、解除料が1人分で済むというメリットもある。

 一方、auの施策は誰でも割のみであり、ファミ割MAX50に相当するサービスは存在しない。そのため、家族全員にこの割引を適用するには全員分の契約が必要である上、中途解約時の解除料も全員分支払う必要がある。

 なお、各キャリアの対抗策として割引サービスを打ち出したソフトバンクもこれに準拠しており、ブループランではファミ割MAX50に相当する「家族割引MAX50」が存在するが、オレンジプランには用意されていない。


家族割引サービス契約者における、キャリアによる新割引サービスの適用方法の違い
【拡大表示は画像をクリック】

 次回は、新しい料金施策を適用した場合の従来の料金プランとの比較、特にソフトバンクのホワイトプランやWホワイトの比較を中心に取り上げていきたいと思う。

筆者紹介 佐野 正弘(さの・まさひろ)
元々はゲームやWeb、携帯コンテンツなどのデジタル・コンテンツを開発するエンジニアだが、一方で黎明期からモバイル・携帯電話に関する執筆を手がけており、最近ではこちらに力を注いでいる。著書に「ケータイで稼ぐアフィリエイト」(技術評論社)、「携帯サイトアクセス向上テクニック」(毎日コミュニケーションズ)など。

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