Wii人気で潤う部品会社
2007年10月4日 木曜日 FINANCIAL TIMES
製造 企業 マーケット 任天堂 部品メーカー Wii
好奇心からゲーム機「Wii(ウィー)」の筐体を開けてみた人は、その“内臓”が至極平凡であることを知ることになる。回路基板が1枚と、見慣れない形の電子部品がいくつかあるだけだからだ。だが、任天堂のWiiが予想を超えるヒットとなる中、Wii内部の動作センサーやチップを製造する企業が突如、著しく業績を伸ばしている。
米マイクロソフトはWiiより1年も早く次世代ゲーム機「Xbox360」を発売していたが、Wiiは今やそのXboxを追い抜き、世界一売れている次世代ゲーム機となった。
ミツミは500%増益
任天堂は、Wiiの今年度の世界販売台数が1650万台(前年度比180%増)を超えると予想している。またアナリストらは、任天堂が欧米市場のクリスマス商戦に向け、第1四半期は月産約110万台ペースだった生産台数を倍増させると見ている。Wiiを陰で支える部品メーカー各社では、収益と株価が急拡大。任天堂との関係のおかげで一躍脚光を浴びている。
最大の恩恵を受けているのが、ミツミ電機だろう。同社はWiiの無線LAN(構内情報通信網)モジュールとコントローラー部品を供給。本体組み立ての一部を受け持ち、同じく任天堂の人気携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」の部品も供給している。
アナリストらはミツミ電機の利益の約40%が任天堂関連だと見ている。今年第1四半期(4~6月期)の営業利益は前年同期比500%増の95億円に跳ね上がり、昨年のWii発売以降、株価は2倍以上に膨らんだ。
大阪に本社を置き、WiiのACアダプターを供給する田淵電機は第1四半期の決算で、売上高が52%増の93億円、営業利益が492%増の4億2100万円に達したと発表した。やはり大阪に本社を置く小型部品メーカーで、Wiiの組み立てを受託するホシデンは、売上高が84%増の1006億円、営業利益が62%増の30億円に急拡大した。
これらの部品供給メーカーはクリスマス商戦の需要増にも問題なく対応できるというのがアナリストの見方だ。
東京のあるアナリストはこう語る。「任天堂は同一の部品について必ず複数の供給元を確保しているため、部品の不足が起こらない。この戦略により最適な価格で部品調達ができ、生産体制が問題とはならないのだ」。
例えば組み立て工程では、ホシデン、ミツミ、台湾の鴻海精密工業の3社を起用。Wiiコントローラー用の動作センサーは、仏伊合弁のSTマイクロエレクトロニクスと台湾のピックスアート・テクノロジーズの2社が供給する。
粗利は欧州で1台8500円も
「任天堂は部品メーカーに対し、月間の調達量を保証している。このため部品メーカーにとってリスクはなく、サプライチェーン全体で効率を発揮できる」と、日興シティグループ証券のゲーム業界アナリスト、福田聡一郎氏は語る。
任天堂は、WiiとDSの製造のほぼすべてを外部委託しており、機器の発売からわずか1年しか経っていないにもかかわらず、ハードウエアから多大な利益を上げている。
福田氏は、国内市場におけるWiiの1台当たりの粗利益を1500円と見積もる。欧米市場では、Wiiの小売価格が高いうえに、「Wiiスポーツ」がハード本体に付属しているため、為替レートを勘案すると、1台当たりの粗利益は米国で5600円、欧州では8500円に上るという。
任天堂の機敏さはソニーの「プレイステーション3(PS3)」の戦略とは好対照を成す。アナリストの試算では、ソニーはPS3の心臓部に用いる「Cell(セル)」チップの開発に莫大な投資を行い、部品の40%近くを内製している。ソニーがPS3のハード販売で利益を出せるのは2009年以降と見られている。
Mariko Sanchanta
(FINANCIAL TIMES,(C) 2007 Sep. 17,The Financial Times Limited)
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